樋口三郎の授業情報@龍谷大学先端理工学部数理・情報科学課程

樋口三郎の授業情報@龍谷大学先端理工学部数理・情報科学課程

LMS上の課題・フィードバック・成績・コースは(いつ)消すか?

LMSでは,「整理」のために,いったん公開した成績やフィードバック,課題そのもの,コンテンツ,科目そのものを,教員が削除や非表示化することができる.

ここでの主張:削除や非表示化が必須である状況は少ない.どうしても必要なときは,その方針と時期を科目受講者に事前に伝えるほうがいいだろう.

以下は龍谷大学の状況/用語と,龍谷大学のLMSである manaba に即して記述する.

成績とフィードバックの消去

レポートの成績とフィードバックが残っていると,学習は,次のレポートや活動が発生したときに,前回から修正すべき点を思い返して,修正することができる.

次のレポートがなくても,学習者は振り返ることができる.特に,科目の最終成績公開は,提出物とフィードバックを振り返るよいタイミングとなる.

科目の清秋成績公開時に以前の成績とフィードバックが確認できると,成績計算のミスがあって成績疑義を提出すべきかどうか正確に判断できる.成績疑義を提出する際にも,疑問点を的確に記述することができる.

提出されたレポートの消去

提出されたレポートが残っていると,最終レポートを組み立てるときの材料になる.

ポートフォリオ

manaba のポートフォリオはその一例で,学生の提出したレポートを学生が保持し,(教員が決定した方針に従い)公開したり,教員と限らない他の人からフィードバックを受け取ることができる.eポートフォリオと呼ばれるシステムの(LMSと深く統合された形態の)一例である.

コンテンツ・レポート課題・小テスト問題の消去

コンテンツ(レジュメや動画)が残っていると,後の時期に別の科目で,この科目と統合して考察・理解したくなった学生に役立つ.

小テスト問題の秘匿

よいテスト問題の作成には労力がかかる.過去問として流通すると正確な評価にならないタイプの問題があり,そのタイプの問題を秘匿しておいて再利用したい,というのは,教員側の自然な欲求である.

学生が各自で保存しとけばいい話じゃん?

点数やフィードバックは受け取ったときにメモ,レポートは提出時にファイルを残す,コンテンツは読むたびにダウンロードして保存する,ってすればいいじゃん.レジュメや提出レポートやレポート返却が紙のときは学生が(コピーして)保存してたよ?

それは真実だが, manaba の科目内には,科目内容を一番よく知る教員が整理・配列した状態でこれらが置かれている.それをそのままの形で参照したいというのは学生の自然な欲求だろう.自分の提出するレポートファイルと,レポートの作成指示とを組にして保存しておく?「消去されるかもしれないから」というだけで全科目全課題についてやっておけというのは非効率だろう.

科目の消去

以上のもの(ポートフォリオを除く)をまとめて非表示にする方法として,教員は科目を非表示にすることができる.

学生・教員の manaba のホームには多くの科目が表示されるため,収容した科目を非表示にして整理したいという気持ちが起きる.

しかし,整理にはもっといい方法がある.ユーザごとに,後期科目だけを表示することを選択できる.ユーザ別に科目に★をつけて整理することができる.

教員が科目を「使わない科目」にすると,他のユーザの意志に拘わらず,すべてのユーザに対して科目が非表示になり,科目内のコンテンツに一切アクセスできなくなる.

特に操作しない場合,科目は,新たな書き込みや受験や提出はできないが,参照のみが可能な状態で,4年間(受講者の在学が想定される期間)は残る.

前期の紙課題をリサイクルする,または二酸化炭素を排出する紙課題をなぜまだ使うか?

課題やテストはLMSで行うことが増えているが,樋口の対面授業科目では,指定の紙に記入してもらって回収する形式も多く使っている.学期末には研究室に大量の紙がたまるが,成績計算にミスがないことがはっきりした学期終了後の9月末にはリサイクルに出してよいことになっている.枚数を概算してみる.

  • 線形代数☆演習
    • trial(小テスト) 1枚x30回x100人=3000
    • チーム課題(グループワーク) 1枚x15回x100人/ 2(人/チーム) =750
  • 確率統計
    • trial(小テスト) 1枚x15回x100人=1500
    • チーム課題(グループワーク) 1枚x15回x100人/ 2(人/チーム) =750

よくあるA4コピー用紙の段ボール箱1個強か*1.

ワークフローはこう.

  1. 学生さんが授業中に記入済み課題を提出する(ソートはしない.表裏上下は揃える)
  2. TAが赤ペンで annotate する
  3. 教員が茶ペンで点数とフィードバックを記入する(「P」:過程不足のような符号あり)
  4. 学籍番号と点数のペアをファイルに記入する
  5. 記入済み答案をスキャンしてPDFに変換する
  6. Moodleの課題で点数と答案画像PDFをフィードバックする(通知あり)

紙のメリット(LMSのデメリット?)はいくつか.

  • 数式やグラフのLMSへの入力にはまだ課題が多い(何とかしようとしている方々がいる *2 ).
  • ある種の共同作業には紙のほうが向いている(という主張がある*3 ).
  • (共同)作業手順を反映した凝ったレイアウトを教授者がするとき,紙の方がLMSよりもコストが低い.
  • Moodle LMSにはQuizの共同受験の機能がない.課題の共同提出には,グループを教員があらかじめ決めておくことが必要.

専用の紙を配って記入してもらうけど,提出は学生さんがカメラ撮影してLMSにアップロードという方式も考えられる*4.まあそれでもいいのだが,あまりに高性能なスキャナが課程事務室にあって,Moodle LMSのDocument Converterにこれを上回る設定ができないということが大きい.教員による添削も添削も,数式やグラフに加筆するのは手書きのほうがLMSの採点ツールより楽ということがある*5.

*1:余裕を持って印刷するので,他に余りの用紙がでるが,これは両面片面に応じて裏紙または即リサイクル

*2:

  • 白井, 詩沙香, 仲村, 裕子, 福井, 哲夫, 数式自動採点システムにおける数式入力インタフェースの提案と評価, 情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE). 1 (2015) 11–21. https://cir.nii.ac.jp/crid/1050564287859235200
  • 原敬広, 中村泰之, 手書き解答数式オンラインテスト環境の試作, 数理解析研究所講究録. 2022 (2017) 157–163. https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/231777/1/2022-18.pdf

    *3:

  • 今本恕., 高田秀志, 紙媒体を用いた作業の特長を誘発する協調検索支援システム, 情報処理学会論文誌. 59 (2018) 723–733. http://id.nii.ac.jp/1001/00185790/
  • Haberr, J., Naceta, M.A. and Carpendate, S.: Paper vs Tablets: The Effect of Document Media in Co-located Collaborative Work, Proc. 2014 International Work- ing Conference on Advanced Virtual Interface, pp.89–96 (2014)

    *4:Moodle LMSでは,課題をグループ単位で提出できるが,グループは教員があらかじめ決めておくことが必要

    *5:テキスト入力やルーブリックに沿った採点はMoodleの採点ツールのほうが速い

  • LuaLaTeXへの乗り換えを生き延びる

    OSやキーボードは様々に乗り換えても, 1990年頃からずっと pLaTeX を使ってきた(1989年には ASCII日本語MicroTeXを使っていたかも?).

    特に多言語組版をしているわけではないが, 2020年前期から, upLaTeX (Unicode版)に変更した.

    特に Lua スクリプトを書いているわけではないが, 2022年前期から, LuaLaTeXに変更した.

    以下 LuaLaTeX について.

    最初に試行錯誤でプレアンブルや\usepackage群を書き替えると,その後は問題なく動いている.

    即物的メリットとしては

    • PDFLaTeX の系統なので(?).tex から .pdf が直接生成される..dvi がない.dvipdfmx の設定を気にする必要がない.
    • 日本語対応がパッケージレベルで行われている(LuaLaTeXの実行ファイルは特別な日本語版ではない)ため, listings.sty や qrcodes.sty のような,日本語化に難があったパッケージや,PDFLaTeX向けで pLaTeX での動作に難があったパッケージが問題なく動作する.
    • \directlua で,tex 内でプログラムを実行できる.
      • 複数の箇所に同一の数値が出てくるときは,pLaTeX でも先頭で \newcommand や \setcounter で定義すればできるが,\directlua では,それを(浮動小数点)計算して,別のテキストや pgfplots の中で使える.

    即物的デメリットとしては

    • やや動作が遅い

    また, 少なくとも MacPorts の TeXLive では,LuaLaTeX と pLaTeX の共存は問題ない(=過去のファイルは pLaTeX2e + dvipdfmx で処理できる)

    Overleaf では LuaLaTeX が,設定すれば pLaTeX2e も使える.学生さんも LuaLaTeX を使っている.

    美文書作成入門も最近は LuaLaTeX になっている.

    Team539メンバーが演習支援 chat bot についてFIT2023で発表

    MoodleのフォーラムとTeamsのチャネルの両方に投稿してメールとTeamsで通知する方法

    オープンソースのLMSであるMoodleでは,フォーラム(掲示板)への投稿をメールで通知できる.組織で Microsoft Teams を使っているとき,Teamsで通知したいというのは自然な発想.

    技術的な王道としては,Moodle に通知方法を追加できる output message filter プラグインを書いて,Teams チャネルの Inbount Webhook を叩くことが考えられる*1.

    堕落した策としては,Forumに投稿するたびに,内容を手でTeamsチャネルにコピーするというのが考えられる.

    中間の策としては,Teamsのチャネルには,「チャネルのメールアドレス」に送信したメールの内容が自動的に投稿されることを利用して,Moodleフォーラムからの通知メールをチャネルのメールアドレスに(何らかのツールで)自動転送することが考えられる.

    しばらく中間の策を使っていたが,2023年3月頃からTeamsのスパムメール投稿検出が厳しくなったらしく(?),MoodleからSendGridのメールサーバで送り,Gmailのフィルタで自動転送したメールが,チャネルに投稿されなくなった.

    最近は,堕落した案の変種を使っている.投稿+通知したい内容が,毎週の授業(Teams会議を併用する)の予告に限定されるので,(強制購読でない)Forumに予告をポスト(Forum側で最初に書くのは,MoodleのAutolinkフィルタを使うと,Moodleの各活動・リソースへのリンクを書くのが楽だから)し,それをコピーして,Teamsの会議の詳細フィールドにペーストしている((メンションするとTeamsで通知され,一定期間読まれないとメールで通知される).

    *1:返信などの構造は保たれない

    2023年夏の理工インターンシップの実習先の企業さまを訪問

    先端理工学部の3年2Qから夏休みにかけて(6/1ごろから9/15ごろ)は,必修科目がなく,学生さんの自由な活動ができるギャップターム期間R-Gap.

    その典型的な活動のひとつ, 理工インターンシップ (以前の学外実習の後継科目). 自分でみつけた, または, 学部の仲介する企業さまで2週間の実習を行います. 企業さまにはたいへんお手間をおかけしますが, 学生さんは, 授業では学べないことを多く学べる活動です. 企業さまには感謝しかありません.

    今日は課程の学生3人がお世話になっている京都市内の企業さまにご挨拶にうかがい, 学生さんの様子をうかがいました.

    hig3r.hatenadiary.com

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    授業での参加者グループ分けをMoodleで連絡する方法

    対面・オンライン授業で,教授者が参加者をあらかじめグループ分けして,グループでの活動を行うことがある.このグループをどのようにして参加者に伝えるか.Moodle LMSを使う場合を考える.3つの方法.

    1. 名簿(参加者名:グループ名のリスト)を作り,コース内のリソースとして置く.リソースのURLをフォーラムなどで各参加者に通知する.
      • 全参加者のグループが全参加者に伝わる.
      • 参加者は自分の名前をリスト内で検索する必要がある.
    2. ダミーの課題を作り,提出物なしで,フィードバックテキストに各参加者の所属グループ名を書く.課題のURLをフォーラムなどで各参加者に通知する.
      • 自分のグループが本人のみに伝わる
      • オフライン評定ワークシートを使えば,参加者別のフィードバックテキストを書くのは容易
    3. 参加者をMoodleのグループに分ける*1.属するMoodleグループはユーザプロファイル内のコース詳細の欄に表示されるので,そのURL*2を各参加者に通知する(授業内で使うグループである,という説明文は通知内に書く)

    *1:Moodleによるオンライン授業の場合,いずれにせよ必要になるだろう

    *2:https://example.com/moodle/user/view.php?course=コースID