樋口三郎の授業情報@龍谷大学先端理工学部数理・情報科学課程

樋口三郎の授業情報@龍谷大学先端理工学部数理・情報科学課程

manaba course を既存のサービスと比較する

龍谷大学では, manaba course https://manaba.ryukoku.ac.jp が, 2015年4月に, 情報メディアセンターにより正式運用開始になる.

http://d.hatena.ne.jp/hig3r/20141216/1418681731

Moodle と LMSとしての manaba course

manaba course は第一義的にはLMS=Learning Management System である.

機能

Moodle ("eラーニングシステム" https://moodle.media.ryukoku.ac.jp)でいうと

  • 活動
    • フォーラム(教員による投稿のみ)
    • 課題
    • 小テスト
    • フィードバック
  • リソース
    • ページ

をカバーしている.

表現

manabaは各々の設定がよりシンプルで, 設定や機能の命名も, 日本語圏の学校で活動する者にとって中身が想像しやすいものになっている(Moodleはオーストラリア発祥). ちょっと驚くが, デザインできるホームページというか, Moodleでいうコースページのコースフォーマットがなく, 個々のコンテンツがシンプル分類されて蓄積されていく.

共有

manaba course で優れている点は, 学生の提出する課題=レポートを授業内またはポートフォリオで共有するのが非常に楽であること. レポートのオプションの一つとして最初から「共有」が用意されている. Moodleではレポート課題を受講者間を見せ合うのは, 可能だが少し複雑で, 課題でロールやケーパビリティの変更を行う, フォーラムで代用する, ワークショップを使う, Maharaに送ってそこで共有する, などになるのと比べると, 共有するのが普通な感じ.

龍谷大学での運用

manaba courseは, 事務局が, 開講しているすべての科目に対応するコースが作り, 履修登録しているすべての学生を登録する運用がなされるそうなので, 教員にとっては, 使い始めるまでのコストが低くなる.

追記(2015-05-07 Thu) エクスポート・インポート・バックアップ・リストア

Moodleでは, コースをまるごと, あるいはコースのうち選択した要素をzipファイルの形でエクスポートし, またそれを別のコースとしてインポートすることができる. これによりコースのコピーが可能である. これは年度更新の際には便利で, ある科目の今年使ったコースを保存したまま, 新年度用のコースを複製することができる. しかも, 自然言語でお願いすると情報メディアセンターのかたがやってくださる.

一方, 現状の manabaにおいては, 機能上の制約で, 1個のアンケート, 1個の小テスト, 1個のコンテンツ, という単位でしかエクスポートできないのだそうだ. したがって, 新年度は自動的に科目のまっさらなコースが作られ, そこに, あらかじめ自分で保存しておいたアンケート, 小テスト, コンテンツをインポートしまくる, というのが教員の年度はじめの作業になるだろう.

ePortfolio としての Mahara と manaba course

ここで考えるのは, manaba folio でなく manaba course のポートフォリオ機能である.

レポートの蓄積

manaba courseのポートフォリオに保存する, というオプションはレポート機能などと統合されており, 教員にとっても学生にとっても簡単にレポートを集積していくことができる(Moodle-Maharaでも, ポートフォリオプラグインを導入すれば「ポートフォリオに送る」できるが, manaba course では教員が設定すれば自動的に送られる). 提出したレポートは科目別に一覧表示でき, 科目内で教員や学生がコメントできる, Maharaでいえば, アーティファクトがフィードバックつきで集積される部分に相当する.

レポートの共有

しかし, ポートフォリオとは言っても, manaba course には, 提出物を学生が選別して種々のポートフォリオを公開する, ような機能はない. そのレポートを共有, コメントできるのは, レポート課題が出題された科目の学生, 教員に限られる.

自主学修

manaba course では, 科目で設定されたレポート課題と無関係なアーティファクトを集積することはできない. これは, manaba course で科目が柔軟に設置できるような運用が行われるなら, 実質的にカバーされるだろう.

しかし, manaba course のポートフォリオは, 学生の自主的な学修を支援するポートフォリオとしては機能が不足している点もあるように思える. 実際, Maharaにあって manaba course のポートフォリオにない機能を挙げると

  • 授業と独立なグループ
  • 授業以外のユーザ集団での共有
  • ページの編集
  • (科目横断的)日記

などとなる.

龍谷大学での運用

Mahara は現状では情報メディアセンターは運用されていない. 運用されている, 共有が可能な eポートフォリオ的なものとしては Google Drive があるが, manaba course のポートフォリオ機能は, 科目という単位を明確に意識している.

現在のMoodleの運用では, 原則として年度ごとにコースや学生の登録が消去される. したがって, 提出したレポートやコンテンツにはアクセスできなくなる. manaba course では年度ごとに消去せず蓄積する運用がされるようである.

携帯出席としての at.ryukoku.ac.jp と manaba course の出席カード attend.ryukoku.ac.jp

携帯出席確認システム http://at.ryukoku.ac.jp は, 2006年頃に学内開発され, 運用が続いているもの.

構造: 科目中心か出席カード中心か

atでは, 科目が主要なオブジェクトで, 科目ごとにURLがある. 科目に対していつでも行える出席登録を, 教員が事後に有効期間などを設定して整理する.

manaba course の出席カードでは, 「出席カード」=今日の出席活動, が主要なオブジェクトで, 「出席カード」を各回の授業前/中に教員が生成し, 出席カードに固有の「受付番号」で特定する. 「出席カード」は生成から7日後に自動的に無効化される, または, 手動で「現時点で」無効化する. 学生の送信時刻も記録されるので, さらに手動のデータ整理で, 狭い範囲に限定することもできるだろう.

教員の学期始め準備

at では学期はじめに教員が事務局に利用申請し, http://at.ryukoku.ac.jp 以下の科目別URLを得る. manaba course は全科目が登録済み, URLは全科目共通の https://attend.ryukoku.ac.jp

送信する情報

学籍番号, 選択肢, 自由記述が可能であることは両者で同じ. 選択肢は, クリッカー http://www.a.math.ryukoku.ac.jp/~hig/eproj/clicker の代用として使うことも考えられる.

manaba course では, 事前に教員が詳細な質問項目を持つアンケートを構築しておくことができる(MoodleでいうFeedback, Questionnaire活動のようなもの).

manaba course には座席表機能はない.

manaba courseでは科目を指定する受付番号がマジックワードを兼ねている.

認証

at には学生を(全学)認証する機能があるが, 現状では希望する科目でのみ有効化される. また, 履修登録のデータは持っていないので, 認証を行っても, 間違えた科目に出席登録することが起きうる.

manaba course の出席カードでは, 認証された, 履修登録した学生のみが送信できる. 回ごとの教員の設定で, 匿名出席にすることもできる(意見収集に有効.).

結果表示

atでは30秒ごとのreloadだが, manaba courseの出席カードでは Ajax でリアルタイムに更新される.