樋口三郎の授業情報@龍谷大学先端理工学部数理・情報科学課程

樋口三郎の授業情報@龍谷大学先端理工学部数理・情報科学課程

Microsoft Teams のオンライン授業でグループワーク(ブレークアウトルームのような)

Microsoft Teams とは

Microsoft Teamsはビデオ会議を含むビジネスチャット. ビデオ会議部分はZoomと比べられ, 同時双方向のオンライン授業にも使える.

Teams には永続するチームとチャネルがあり, Office365とも連携して, 1学期間継続する授業を一貫して運営するLMS(学習管理システム)としても使える.

龍谷大学先端/理工学部では, 2019年度後期から Microsoft Teams を授業で, また, 学生サポートで利用している.

Update(2020-12-10)

forest.watch.impress.co.jp

Microsoft Teams にはグループワーク専用機能はない

グループワークは, 授業全体(10人以上)を複数のグループ(2-10人)にわけ, グループ内で議論や制作などの活動をさせ, 成果を授業全体に持ち帰って統合する手法. グループは, 1授業回内の数十分だけ継続するものも, 1学期間に渡って継続するものもある.

Zoomには, 1授業回内のグループワークに適した, ブレークアウトルーム, Breakout Roomsという機能がある. その場で参加者をグループ分けしたり, ホスト(授業担当教員)が各グループをモニターしたり, 一斉に呼びかけたりすることができる, 優れた機能である.

Teams には, グループワークにはこれ, という単一の機能は現時点で存在しない. 2020-01でPlanned, 2020-04-15時点でWorking on it, 2020-07-07時点で2020年第4四半期リリースの予定で開発中と表明されている*1.
現時点では, 様々な機能を選んで使ってグループワークを実行できる.

Microsoft Teams でグループワークする手順

1学期間1科目1クラスの授業が1チーム(TM)になっており, その中に何個かのチャネル(ch)があることを想定する. 受講者のみがメンバー登録済みのクローズドチームとする. どの方法も, クラス全体の名簿, またははその回の参加者名簿*2を教員が持っていて, 教員がグループを作成して, 手で設定に反映するか(方法1,3,4,5), 学生に伝えるか(方法1,2)することが必要である. 大胆に言えば, 短時間のグループワークには方法1を, 数回継続するグループワークには方法3を奨める.

方法1(グループ用グループチャット)

学内の教員の方へ: 操作動画がありますのでお問い合わせください. 実際の学生さんの学籍番号が映っちゃってるんですが, 編集で消すと何やってるかわからないので.

操作

グループチャット(テキスト, 音声, ビデオ)は, TMの枠組みとは独立して, すべてのユーザが開始できる. 画面共有や, ファイルタブなど, Teams会議に近い機能がある. 各ユーザは複数のグループに並行して参加できる(音声, ビデオは, クライアント(アプリ/ブラウザ)ごとに, 1個を選び, 他は保留する必要がある).

グループ編成を配布資料や口答指示でTMメンバー(学生)に伝達し, リーダーに他のメンバー(と教員)を含むグループチャットを開始してもらう. または, 教員が多数のグループチャットを自分から開始することもできる. グループメンバーリストから次のURL*3をグループの個数だけ, 作成し, 次々クリックしていく.

https://teams.microsoft.com/l/chat/0/0?users=student1@example.ac.jp,student2@example.ac.jp,ta@example.ac.jp&topicName=GroupNumber07&message=GroupNumber07のみんなよろしく.担当者樋口もはいってます〜

成果物

ダウンロード/アップロード/OneDrive を経由して授業全体に持ち帰れる.

モニタリングと介入

授業のTM所有者(教員)が各グループに介入するには, 全員のいる一般ch(やそこの会議)で発言するか, あらかじめ各グループチャットに入れておいてもらって発言する, 会議チャットで発言する, 各グループに対応するタグ*4を作っておいてメンションする. 強制的にグループ活動を終了することはできない.

多数のグループチャットがあると, 一度には1個の音声や動画しか見られない(他は保留)なので, 状況を一覧して把握するのは少し難しい. 多数の端末やブラウザウィンドウで開くことはできる. 各グループチャットでWordやOneNoteのファイルを会議用ホワイトボードとして使ってもらい, それを多数のブラウザウィンドウで開くと, ある程度は進行状況が一覧できる.

Cons

  • 別の授業で同じグループになったときはグループチャットが同一になって話が混ざる. 学科の科目で「(友達で)自由にグループ作れ」だとありそう.
  • 介入のために教員が多グループに入ると, 授業中に音声チャットが始まったときに, 多数の着信が起きる*5.
  • 介入のために教員が多グループに入ると, 授業後にグループが連絡を取り合おうとしたときにも, 音声チャットが教員にも着信してしまう*6.
  • ホワイトボードや成果物持ち帰り用として, 教員がテンプレートをグループチャット内で共有することが考えられるが, これらの共有ファイルはグループごとにグループ名を入れるなどして別々の名にする必要がある*7

    注意

    グループチャットは, 途中からメンバー追加したり, 削除したりできる*8.

方法2(グループ用Teams会議)

準備

ビデオ会議であるTeams会議は, 同ch内, 同TM内でも, 「予定」から何個でも予定できるので, グループの数だけ教員が予約する. グループのリーダーに予約してもらうこともできる.

操作

グループ編成を配布資料や口答指示でTMメンバー(学生)に伝達し, 自発的にそのTeams会議に参加してもらう必要がある. だれにでも他グループのTeams会議を覗き見できる.

モニタリングと介入

教員に限らず, だれでも, 複数のTeams会議に同時に参加することができる. クライアント(アプリ/ブラウザ)ごとに, 1個のTeams会議を選び, 他は保留する必要がある. 保留した状態でも会議チャットには書き込める.

授業のTM所有者(教員)が各グループに介入するには, 全員のいる一般ch(やそこの会議)で発言するか, 各Teams会議に入っていって発言する, 会議には入らず会議チャットに書き込む(話題にあった書き込みは難しい), 各グループに対応するタグ*9を作っておいてメンションする. 強制的にグループ活動を終了することはできない.

多数のTeams会議があると, 一度には1個の音声や動画しか見られない(他は保留)なので, 状況を一覧して把握するのは少し難しい. 各Teams会議でWordやOneNoteのファイルを会議用ホワイトボードとして使ってもらい, それを多数のブラウザウィンドウで開くと, ある程度は進行状況が一覧できる.

成果物

そのままチャネルに置くことでも, 授業全体のチャネルの「ファイル」に移動させることでも, 授業全体に持ち帰れる.

Cons

授業のチャネル内に埋没して, 後日にグループを探すのが困難になってしまうという(これに対して, 方法3,4,5はもちろんTM, ch が永続して独立して存在するし, 方法1ではグループチャットとしてチャット内に残る) 方法2は, 授業時間外や複数回にわたってグループ活動を継続するのには向かない.

だれはどの会議に参加しろ, という指定がわかりにくい. 会議に名前をつけるか, 別々のchで会議するか.

方法3(グループ用チャネル)

準備

授業全体のchと別に, 各グループに専用のチャネルを用意する. 長期間継続するグループ向け.

操作

グループ編成を配布資料や口答指示でTMメンバー(学生)に伝達し, 自発的にそのch/Teams会議に参加してもらう必要がある. だれにでも他グループのch/Teams会議を覗き見できる.

成果物

成果物は, そのままチャネルに置くことでも, 授業全体のチャネルの「ファイル」に移動させることでも, 授業全体に持ち帰れる.

モニタリングと介入

授業のTM所有者(教員)が各グループに介入するには, 全員のいる一般chで発言するか, 各グループchで発言する. 強制的にグループ活動を終了することはできない.

方法4(グループ用プライベートチャネル)

準備

授業全体のchと別に, 各グループに専用のプライベートチャネルを用意する. 長期間継続するグループ向け. プライベートチャネルへのグループメンバーの登録は, 手動でも, CSVから(管理者による)Windows Powershell スクリプトによってもできる(?). TMの設定によっては, メンバー(学生)自身にch作成とメンバー登録を行ってもらうこともできる.

操作

学生は自分が参加できるチャネルに参加する

Pros

チャネル/会議への所属をTM所有者(教員)が強制でき, 覗き見も禁止される. プライベートチャネルで立てた会議*10はチャネルメンバーに限定できる.

成果物

各チャネルの「ファイル」間を移動させることで授業全体に持ち帰れる.

モニタリングと介入

授業のTM所有者(教員)が各グループに介入するには, 全員のいる一般chで発言するか, 各グループのプライベートチャネルのメンバーになっておいて, そこで発言する. 強制的にグループ活動を終了することはできない.

方法5(グループ用チーム)

準備

授業のTMと別にグループの専用TMを用意する. かなり長期間継続するグループ(科目の中に異なるプロジェクトを1学期間で実施するグループが複数あるようなケース)向け. グループメンバーのTMへの登録はその組織での Teams 運用による.

操作

学生は自分が参加できるチームに参加する

成果物

持ち帰りは, ダウンロード/アップロード/OneDrive による.

介入

授業のTM所有者(教員)が各グループに介入するには, 全員のいる親TMで発言するか, 各グループTMの所有者/メンバーになっておいて, そこで発言する. 強制的にグループ活動を終了することはできない.

追記(2020-05-16))

Google Meet で同じようなことを考えている記事を教えていただきました.

Team Bot Break Out

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  • 発売日: 2020/05/29
  • メディア: MP3 ダウンロード
Zoomオンライン革命!

Zoomオンライン革命!

*1:https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/roadmap?filters=Microsoft%20Teams&searchterms=65332 https://microsoftteams.uservoice.com/forums/555103-public/suggestions/35000044-introduce-breakout-room-functionality

*2:会議主催者は, 会議中に参加者の本名のリストや入退場時刻をダウンロードできる Teams での出席レポートのダウンロード - Office サポート

*3:詳細なリンクを作成する - Teams | Microsoft Docs

*4:現在のところファイルからWindows PowerShellで作成することはできない

*5:放置しておくと, 参加した人たちだけで会話が始まるが, 着信音が鳴り続ける. 着信したらすぐ音声チャットに参加して, 保留するか切断する(あとから再参加できる)ほうがましか

*6:授業外では学生だけのグループチャットを作ってそちらを使え, と言う? 教員が自ら, または学生が教員をグループチャットから脱退させることはできるが, 次回の授業で介入するには, 学生さんにグループチャットへの追加をしてもらうか, 教員が再度自分を含むグループチャットを開始しないといけない

*7:チャネルの共有ファイルがSharePointに置かれるのに対して, グループチャットの共有ファイルは送信者のOneDriveのMicrosoft Teams Chat Files というフォルダにフラットに置かれ, グループメンバーに共有設定がされる. summary.docx というファイル名をいろんなグループで使い回すと, 1個のファイルが全グループで共有されてしまう(有用な使い方もあるかも?) . 翌年度の授業で同じファイル名を使うと, 過去のものファイルが上書きされ, 全学年で共有されてしまう. 共有ファイルと思ってたものが, 当初の持ち主が意識せずに消去しちゃう, ようなことが起きそう. 「このファイルは既に存在します。- 両方を保持?置換?」 というダイアログも, 特定フォルダへのコピーが起きていることを思えば理解できる. どこかのチャネルに共有ファイルを作って, それをチャットで共有するほうがいい?

Teams chat file-sharing demystified – Deltinger 365

*8:1:1チャットは別. ずっと2名であることがわかっている場合以外は, 最初から3人以上で始めた方がよい. 樋口はダミーのゲストユーザ BigBrother を入れて必ず3人以上チャットにしている.